会員専用ページトップ 秋吉美千代×城戸由香里 スペシャルトーク Long Ver.(全6回)

目次

〉 第1回:理事長交代の背景
〉 第2回:初代理事長として、これまでの歩みを振り返って
〉 第3回:理事長になって1番驚いたこと
〉 第4回:新しい体制で取り組みたいこと
〉 第5回:事例とエビデンス
〉 第6回:ケアを持続することで効果があがる

第6回:ケアを持続することで効果があがる

(さまざまな事例について)

秋:そういう体験は他にも何回もありました。

ある特別支援学校のイベントがあったとき、子供たちが会場で走り回っていたんですね。親も一緒に走って。そのうち苦しくなって、とうとうバタンってなった時にパッとその子を捕まえて、セラピューティック・ケアをしたんですね。そうしたらお利口ちゃんに受けて寝るじゃない。

そしたら親がびっくりされた。先生もびっくりされた。でも、セラピューティック・ケアだからそうなったと思うんですよ。アロマオイルをつけてハンドマッサージをしたからって、果たしてそうなったかと。なったかもしれんけど、その子はオイルを嫌がったかもしれない。そういうことを思うけど、それは実証実験にはならないんです。でもそういう事例はいっぱいあるんですよ。

城:うんうん。ま、それは事例も積み重ねなので。

秋:そうね、それもいっぱい書けば、それでいいのかもしれないけどね。

もう1つは持続性。だいぶ前のことですが、ある活動先の施設に、非常にBPSD(認知症の人に認められる不安や抑うつ、幻覚などの心理症状や、攻撃性や徘徊などの行動症状)が強い方がいらっしゃったんですね。初めて伺ったときは、スタッフ2人がついて手や脚を抑えてくれたんだけど、私が手をふれたとたんに唾を吐きかけられて、とにかく取り付く島もなく、その日はおとなしく帰りました。

1週間後に行くと、やっぱり看護ステーションの中に拘束されて、わーわー言われてやっぱり触れない。それでも1週間に1回通いました。でも、3回目か4回目に、「ひなまつり」の曲を入れたレコーダーを持って行ってかけたら、おとなしくなられたんですね。実は娘さんから、その方が音楽の教師だったと聞いて、試しに持って行ってみたんです。その時初めて、彼女の背中をちょっとだけ撫でることができました。それが精一杯でした。でもこの時はスタッフの手伝いなしだったんですよ。

それからも1週間に1回通ううちに少しずつ抵抗されなくなり、施術できる時間も長くなり、3ヶ月に入ったころには、満面の笑みでケアを受けてくださるまでになったんですね。娘さんが、『この写真(ケア開始前と3か月後の写真)を教材に使ってください』と言われるくらいの変化がありました。

城:持続したからこその成果ですね。

秋:でも、BPSDが強かったら、1週間に1度のボランティアでは持たない。素人ながら、それは経験上わかりました。その方の場合も、私が行かなくなって、2、3ヶ月してもう1度行ったら、もう最初と一緒。継続することの大切さを学んだんです。だからどれくらい継続ができるのか、そこを切らさないようにやっていく方が治療力のあるケアという言葉の裏付けになるのかなと私は思っています。

城:私の施設で施設セラピストをみんな取らせたのはですね、論文を読むと、やっぱり常に触れるケアをやっている人の分泌の速さは、していない人よりずっと早いんですよ。手を置いた時にもうスイッチがカチって入る。

でも、1ヶ月に1回になると、そこにスイッチが入るのに15分とか20分とかやっとかかってしまう。だからいつもいつもうちの職員たちが触れてそのセラピーをしていると、そのスイッチがすごく早く入るんですよね。

秋:うんうん。

城:秋吉先生は一昨年、ご主人をご家庭で看護して看取りまでされたわけですが、先生がケアをされる時もやっぱりご主人様へスイッチが入るのがだんだん早くなっていった。

秋:だって、毎日でしょ。朝晩毎日、主人にセラピューティック・ケアをやったから。

城:だからそれもすごく意味がありますよね。

—– セラピューティック・ケアのことになると、話がつきませんね。

秋・城:はははは。

 

(収録日:2022年3月16日/ 聞き手:水上)

 

撮影協力:糸島SDGs Vilage 地球MIRAI