セラピューティック・ケアとは
セラピューティック・ケアの起源は、1950年代にイギリスのアトキンソンズ・オブ・ボンドストリート・ビューティハウス(Atkinsons of Bond street Beauty House)の理事が入院中の女性の回復の助けにと始めた「ビューティケア(化粧療法)」です。
そのビューティケアを英国赤十字社が発展させて1970年代からハンドケアを取り入れ、その後、シーアン・スコット(Sian Scott)、アニタ・カーウィンナイ(Anita Kerwin-Nye)両女史により、ボランティアのためのスキルとして1996年に確立されたのが、セラピューティック・ケアです。当協会はシーアン・スコット女史から直々に日本でのケアの普及を依頼され、英国赤十字社の許可を得て活動をしています。
※英国赤十字社よりロゴ使用の許可をいただいています。
痛いの痛いの飛んでいけ
小さい頃「痛いの痛いのとんでいけ」と手を当ててもらったら、不思議と痛みが和らいだ経験はありませんか? 「手当て」とは、「触れること」。「治療力のある介護」を意味する「セラピューティック・ケア」は、薬剤や道具を使用せず、洋服を着たまま、両手の温もりだけで行えるシンプルかつパワフルなケア方法です。 セラピューティック・ケアの基本は「エフルラージュ(なでること)」と「ニーディング(こねること)」です。一定の圧をかけ、心をこめて両手で優しく撫で、緊張した心と身体をほぐし、安らぎを提供することを目指しています。
セラピューティック・ケア 3つのスキル
(1)着衣の上からのネック&ショルダーケア
ストレスを感じやすい首・肩・上腕・上背部のケア。触れることに重点を置き、手の温もりを通して心の温もりを伝えるノンバーバル(非言語的)コミュニケーション。
(2)ハンド&アームケア
高齢のクライアントや脳卒中患者、関節炎を患う方々からのニーズを受けて生まれた指先から肘までのケア。向き合って施術するため、言語的コミュニケーション(傾聴・回想法)の効果も期待できる。
(3)着衣の上からのレッグケア
着衣のまま行う、足首からひざ上までのケア。痛みもなく短時間で脚のむくみや腫れを軽減する効果があり、浮腫による脚の痛みに悩んでいる方々にとても喜ばれる。
セラピューティック・ケアの効果
セラピューティック・ケアはボランティアのためのスキルとして考え出されたもののため、専門知識を持たない者が施術しても効果をあげられるケアであり、同時に、専門知識がない者が施術しても怪我や副作用などのリスクがないのです。音楽療法・心理療法・呼吸法と組み合わせることで、相乗効果も期待できます。
○交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態にする
→リラクゼーション効果
○オキシトシン(*1)の分泌量が増え、セロトニン(*2)が活性化される
→ストレスの軽減・不安や緊張の緩和・精神の安定
夫婦・親子の絆を強める、ふれあいにより短時間で相手との距離が近まる(コミュニケーション)
スピリチュアルペイン(精神的苦痛)の緩和、導眠効果(睡眠の質の改善)
○循環機能が活発になり、身体が温まる
→ 脚の浮腫の軽減
○認知症の諸症状の改善
(*1)オキシトシン:愛情ホルモンとも呼ばれ、触れる人と触れられる人の間に愛情や信頼感を生じさせる働きのあるホルモン
(*2)セロトニン:精神のバランスを整えたり、ねむけをもたらす働きのある脳内物質
セラピューティック・ケアが活用されている場面
セラピューティック・ケアは老若男女や国籍を問わずどなたにも効果を上げるケアです。日本では、生老病死のすべての場面で活かされています。
○子育て支援と児童虐待防止
○産後ケア
○小中高等学校の心の授業・福祉体験授業
○認知症ケア
○介護者・看護者のケア
○緩和ケア(ホスピス)・長期療養型ケア
○ターミナル(終末期)ケア
○グリーフケア
○災害時の心の手当て
○介護・看護職を目指す学生の資格取得
○看護職・介護職のスキルアップ
○セルフケア(呼吸法)
○訪問看護・訪問介護